現在、『加茂紙漉場』で行っている、加茂紙制作の工程をご紹介します。
【原材料栽培】
(1)楮
春:冬鳥越スキーガーデンの一画にて開墾・栽培(2021年より開墾し、自生していた面積
から作付面積を拡大しています。)
夏~秋:下草刈り(楮にツルが絡まないように注意が必要)、芽かき(脇芽が出たら、小さ
いうちに摘む)
冬:刈り取り(なるべく株元に近いところを刈り取る。)
※刈り取り後、枝の方向を揃え、一定の長さに切り、束ねておきます。(太さが同じも
のを束ねます。)
(2)トロロアオイ(ネリ:つなぎの材料)
春:冬鳥越スキーガーデンの一画にて種まき(2021年より開墾し、栽培しています。)
夏から秋:開花
秋から冬:次年度用の種を取り、つなぎ用として使用する、根っこを掘り起こす。
【紙素作り】
(1)楮蒸し
ⅰ)釜にて楮を蒸します。(2時間程度)
ⅱ)皮が縮んできたら、熱いうちに、皮を剥きます。
※剥いた皮の方向を揃えておきます。
ⅲ)水に入れます。
(2) 楮たくり
ⅰ)ナゼ(ナデともいう:稲ワラを束ねた枕型の台)の上に楮の皮をのせ、専用の包丁で外樹皮の黒の皮と、内樹皮の緑の皮を掻き削ります。→白い皮が残ります。
ⅱ)水で汚れやヌメリを洗い流し、乾燥させます。(使うときに水で戻します。)
※雪晒し:雪の上に皮を晒します。冬の寒さで氷らし、日光の紫外線と雪の水分の働きで、皮が漂白されます。
(3) 楮煮(煮熟)
ⅰ)皮を鍋に入れて、煮る。
※炭酸ソーダ(炭酸ナトリウム)も入れる(楮の皮を軟化させ、水溶性の不純物を溶かし出す作用。)
ⅱ)煮詰めたものが冷めたら、水に入れて、炭酸ソーダや楮の皮を煮た時に出るアクなどを洗い出す。
(4) チリ取り
水の中で、皮のチリ(汚れ)を丁寧に取り除く。チリ取りをした皮の水を絞り、野球ボール程の大きさの玉に分ける。
(5) 楮たたき(打解)
ⅰ)(4)で分けた玉を、1玉ずつ石の上で「たたき棒」を使って叩く。
※繊維をバラバラにほぐすために行います。
ⅱ)ビーター(水の中で繊維を分離させるための機械)を使って、さらに繊維をほぐす。
【加茂紙作成】
(1)紙漉き
ⅰ)漉き舟の中で、ザクリ(他地方では馬鍬とも呼ばれる)という、大きな櫛のような道具で水と紙素を撹拌する。
ⅱ)ネリ(トロロアオイ:楮の繊維を絡み合わせる植物の粘液・ノリの役割)を入れて、混ぜ合わせる。
ⅲ)簾桁で紙を漉き上げる。
(2)水抜き
ⅰ)漉いた紙は、紙床(しと)と呼ばれる漉いた紙を重ねておくところに置く。(一晩そのままにして、自然と水分を抜く。)
ⅱ)紙床をジャッキにかける。(半日くらい時間をかけて、ゆっくり水分をしぼる。)
※急激に強い圧力をかけると、紙が傷つき、品質が落ちる。
(3)乾燥(紙干し)
水抜きをしても紙は湿っているため、乾燥させる必要があります。乾燥方法は、紙付け板に張り付けるやり方と乾燥機(機械)に貼り付ける方法があります。乾燥に時間を要しますが、紙付け板を使用する方が自然に水分が抜けるため良い風合いになります。
(4)完成