本日、令和元年6月定例会が開催されるに当たり、私の市長就任後、初めて市政運営について所信表明の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。
また、4月の市長選挙におきましては、市民の皆様からの温かく、多大なるご支援のおかげで加茂市長に就任することができました。改めてその職責の重さを痛感し身の引き締まる思いでおります。そして令和という新しい時代に市長に就任できましたこと、大変光栄に思います。
私にとって、市政運営は初めてですが、加茂市議会議員として得た経験とこれまで出会った先輩方や仲間を大切にし、これからの4年間、市民の皆様の幸せのため、ふるさと加茂市の発展のため身を削る思いで全力を尽くしてまいりますので、どうか議員の皆様並びに市民の皆様のご支援とご協力をよろしくお願い申し上げます。
さて、加茂市を含め地方自治体を取り巻く社会経済情勢は大きな転換期を迎えています。Society5.0と言われる、IoT、ロボット、AI、ビッグデータといった先端技術を取り入れた社会の変化の波が、これから加茂市にも間違いなく押し寄せてきます。しかし、その変化は恐れるものではなく、その先端技術がこれまで解決できなかった課題を解決する有力な手段となるかもしれません。私は、新しい発想で課題を解決し、持続可能な加茂市をつくり上げていきたいと考えています。
人口減少、少子高齢化…何度も何度も耳にした言葉だと思います。そして私自身も何度も何度も口にしてきました。加茂市の人口は5月末現在で27,000人を割り込み、今の人口動態のまま推移した場合、2040年には約18,000人まで減少すると見込まれています。簡単に解決できる課題ではありませんが、人口が減少していく市の現実に対して正面から向き合い、次の世代のためにも解決する道筋をつけてまいります。
それでは以下、市政運営の方針について、先般の市長選挙におきまして約束させていただきました主要な施策と方針のもとにある想いを申し述べます。
全ての基本姿勢、施策のもとにある想いは、『未来への責任』です。まずはじめに、市政に対する基本姿勢について三つキーワードを申し上げます。
一つめは、『市民参加型』です。まちづくりや市の課題解決の場面では、私や市の職員でできることは限られています。市民の皆様の意見を聞く機会を多く持ち市政に反映していきます。また、「市長との座談会」を開催し、それぞれの地域や各団体の皆様との対話を心がけ、市民の皆様に開かれた透明性のある市政を目指します。
二つめは、『人づくり』です。課題に正解があってそれを探し求めるという時代は終わりました。正解がない課題に対して自らの考えを持ちそれを相手に伝え、同時に相手の考えを聞き共に解決していく力が子供にも大人にも求められています。市政を支えるのは、「人」です。子供も大人も持てる力を十分に発揮できるよう、頑張りたいと思っている人を後押しし、苦しい状況にいる人には寄り添い支えます。
三つめは、『連携』です。人の流れ、物の流れは加茂市の中で完結するものではありません。全ての人、もの、ことがお互いに関りを持っています。地方自治体も同様です。私は、近隣市町村、県、国としっかり連携し、加茂市と他の地域の良さを認め合い、積極的に加茂市から情報発信していきます。また、地元の産業界や大学と連携し地域の魅力を発掘していきます。
次に、個別の施策についてです。
1.子供から高齢者まで安心して暮らせるまちにするために
- 誰もが希望を持てる未来を創造するため、中長期計画を策定し、財政健全化、基金の積み立てをいたします。
- 9月に開院する新加茂病院を中心に地域医療体制を充実させるとともに、健康寿命を伸ばすため、官民一体となり市民の皆様の健康づくりを推進します。
- 近年増加している自然災害に備え、ハザードマップの作成、自主防災組織の育成、避難訓練など地域コミュニティを活かした防災・減災の仕組みを作ります。
- 障害者自立支援協議会を立ち上げ、障がいがある人が地域で働き、暮らしやすい体制づくりを進めます。また、違いを認め合える共生社会を目指します。
- 老朽化した「清掃センター」の新設計画を作り、ごみ処理問題を解決します。
- 元気なシニア世代がボランティア活動に取り組みやすい環境を整えます。
これらは今、加茂市にある課題です。これらの政策を早期に実行することで市民の皆様が安心して暮らせるまちを作ってまいります。
2.教育の質の充実で子育て世代に選んでもらえるまちにするために
- 英語教育・特別支援教育の充実、部活動の外部指導者の導入などで市内小中学校の教育環境を整えます。
- 子ども支援課、ワンストップ相談窓口の創設など、妊娠、出産から子育てまで、切れ目ない支援を行い、安心して産み育てられる環境を整えます。
- 生涯学習、資格取得など大人になっても学びたい人を応援します。ここでは詳しくは述べられませんが、教育と子育て支援が私が一番力を入れたい分野です。
3.市民全員が活気あふれる豊かなまちにするために
- 良質な宅地開発、コンパクトなまちづくりを進め、若い世代が定住できる環境整備を進めます。
- 積極的に企業誘致をし、若者が働く場を確保します。
- ふるさと納税制度を改善し、市の収入を増やし、加茂市の魅力を発信します。
これらの政策を進め、定住人口、交流人口の拡大に努めてまいりたいと思います。
私は選挙期間中、市長を任せていただけるならば「泥水をすする覚悟だ」という表現をしてきました。これには三つの意味があります。一つめは、市内外に積極的に出向き、市民の皆様のために身を粉にして働くこと。二つめは、自らの報酬をカットすること。三つめは、変革の結果出てくるいかなる批判も全て私が受けるということです。
この気持ちは今でも変わりません。さらに、市長に就任し1か月と10日ほどが経ち強く思うのは、加茂市の財政状況がかなり厳しいということです。これは私の予想以上でした。特に今年度は綱渡りの状態であり、手を打たなければ転落するかもしれないというところにいます。また、施設の老朽化が激しく進行しています。修繕をして施設を維持するのか使用を中止にするのか、判断を迫られる施設が出てくると予想されます。改めて、行財政改革を強い気持ちを持って行うという覚悟を決めた次第です。
一方で、私はこれまでの市政とこれからの市政の調和をはかりたいと考えています。それゆえ、変える政策と変えない政策、変える政策の中でもスピード感を持って変える政策、議会と市民の皆様と時間をかけて話し合ってから変える政策に分類していく必要があります。そして、そのような行財政改革を行うには、その過程が透明性のあるものでなければいけません。しっかりと現状分析をし、市民の皆様が納得のいく解決策を示し、成果を出していきたいと思います。さらに、7月より定例記者会見を行うなどして市の方向性をより広く市民の皆様に発信していきます。
市の組織も少しずつ変えていきます。現在、市の職員数は232人、ピーク時より100人ほど減りました。限られた人員の中で市民サービスの向上をはかるには、組織の中の効率化を進め、職員一人ひとりの力を信じ高めていくことが私の役目であると考えています。そして、積極的にまちに出て課題を見つけ解決する力や加茂市の良さを引き出す政策立案能力を持った組織に変えていきます。
市議会議員の皆様におかれましては、皆様それぞれ得意分野や地域の課題をお持ちのことと思います。一般質問や委員会での質問は、その内容だけでなく質問する時期も市政を大きく左右する時があります。それゆえ、議員の皆様の言葉一つひとつは非常に重いと認識しています。市政に対し時には大きな後押しが、時には慎重にせよという言葉があってもよいと思っています。議会と執行部はよく車の両輪に例えられますが、輪が同じ大きさでなければ前進しません。私も議員の皆様とできる限り情報共有をこころがけ、ていねいな議論をするよう努めてまいります。議員の皆様には今のお立場からの政策提言や行政のチェックを心から期待しております。
繰り返しになりますが、加茂市の財政状況は非常に厳しいです。しかしそのような中でも、これまでの常識から脱却し大胆な発想や新しい概念を取り入れることで今の大変な時期を乗り越えられるかもしれません。いえ、必ず乗り越えます。どうか市民の皆様、市議会議員の皆様、お力とお知恵をお貸しください。
結びに、私の大好きな絵本をご紹介したいと思います。それは、『ぜつぼうの濁点』という言葉あそびの絵本です。“ぜつぼう”という主に仕えていた濁点(ぜ、についている点々)は自分がいるから主はいつまでたっても絶望したままなんだと悩み、新しい主を探す旅に出ます。様々な言葉に出会いますが、うまく付くことができません。しかし最後に出会った言葉にその濁点(〃)が付くことで素敵な言葉に変わり場面が明るくなります。どのような言葉ができたのかネタバレになるのでラストは話しませんが、これからの加茂市もきっとそのラストの言葉で満ちた市になると信じています。
私が絵本の読み聞かせサークルに所属して10年以上経ちました。この絵本もそのサークル仲間から教えてもらいました。加茂市にはこのように市民のためであったり、ご自身の楽しみのために精力的に活動されている方がたくさんいらっしゃいます。その方たちを通して感じるのは、市民の皆様がこのまちの主役なんだということ、そしてその一人ひとりの力を合わせれば大きな力になるということです。加茂市の一番の宝は加茂市民の皆様です。
私は必ず加茂市の財政健全化を成し遂げ、市民の皆様が安心して暮らせる加茂市をつくっていくことをお約束いたします。皆様、ぜひ一緒に令和という新しい時代にふさわしい新しい加茂市をつくっていきましょう。
以上で、市長就任にあたっての所信といたします。議員の皆様におかれましては、何とぞご理解のほどよろしくお願い申し上げます。最後までお聞きくださいましてありがとうございます。