本日、ここに、令和7年度予算案及び関連議案を提出し、ご審議いただくにあたり、市政運営に対する基本方針並びに主要事業についてご説明申し上げ、市民の皆さまと市民の代表たる加茂市議会議員の皆さまのご理解とご支援を賜りたいと存じます。
1 基本方針
私は市長就任後、加茂市の将来像を示す各種計画、方針、ビジョン等を定め、常に中長期的な視点で「あるべきまちの姿」を示すことで、加茂市の活性化や魅力あるまちづくりの実現に注力してきました。加茂市は「行財政健全化推進計画」や「加茂市総合計画」、「長期財政シミュレーション」、「加茂市立小中学校適正化方針」、「加茂駅周辺まちなかエリア未来ビジョン」、令和7年3月には「加茂市都市計画マスタープラン」や「加茂市教育ビジョン」を策定し、これまで様々な変革を積み重ねてきました。令和7年度は行政のみならず、加茂市にとって大変革の年となります。ここで確実に変革する、変革しきったと言えなければ、加茂市が変わるチャンスは今後訪れることはないのではないかと思っています。
その変革の一つとして、将来に向けた持続可能な行財政運営を目指すために「公共施設再編アクションプラン(案)」を令和7年3月末に作成する予定です。この公共施設再編アクションプランの目的は、加茂市における人口規模及び将来の人口推計に合わせた適正な公共施設保有量を定め、使い続けるべき公共施設に対して、長期的な視点に基づく計画的な投資を行うために、適切な維持管理や長寿命化、更新や集約化、用途の変更や廃止などの施策を、適切な時期に実施することにあります。また、併せて公共施設を利用する方と利用しない方との公平性の観点から、利用した方がサービスの恩恵を受けた対価として費用を負担すべきとする受益者負担の原則により、行政サービスを提供するためにかかる経費について、公費で賄う部分と受益者が負担する部分のバランスの適正化を目指すためのものです。
このアクションプランこそが「未来へのスクラップ・フォー・ビルド」の理念に基づいた変革の締めくくりとなります。加茂市の現状と現実に向き合い、持続可能な未来を実現するためには、何より市民のご理解が必要です。そのために、令和7年度をとおして、公共施設の現状と今後20年間に実施すべき再編の必要性や考え方について、市民と対話する機会を設け、これからの加茂市のあり方についても共に考えていきます。
そして、公共施設の再編と財政の見通しが立ったところで、子ども議会で提案していただいたような全天候型の遊び場や加茂市の魅力を発信できる道の駅のような施設の設置、そのほかにもご要望の多い加茂駅のバリアフリー化や小中学校の体育館のエアコンの設置等についても検討していきます。
令和7年度予算案においては、令和6年度から掲げている三つの目標を踏まえて施策を展開していきます。三つの目標とは、「持続可能な行財政運営を目指す」こと、「基本的な生活環境を守る」こと、「質の高い子育て・教育環境を整備する」ことです。
これら三つの目標は、引き続き今後の加茂市政の根幹をなすものと考えています。また、どの目標も行政単独で進めるのではなく、産学金と
連携し、市民と協働して前進することで、大きな成果をもたらすことができると考えています。
2 当初予算の概要
それでは、令和7年度当初予算案の概要についてご説明申し上げます。
令和7年度一般会計予算は、128億2100万円で、前年度に比較して8億3400万円、7.0%の増となりました。
なお、物価高騰対応として当初予算と一体的に編成した令和7年度第1号補正予算9423万円と、国の令和6年度補正予算により令和7年度に実施する事業を令和6年度補正で前倒しして予算措置する1億8558万円を合わせると、131億81万円となります。
主要な財政指標については、実質公債費比率は9.2%で0.3ポイントの減、将来負担比率は67.0%で0.6ポイントの増、市債残高は令和6年度決算見込みと比較して3億3000万円減少し、91億円と見込んでいます。
財政調整基金の残高は、当初予算での財源不足2億700万円と第1号補正予算の所要額719万円を取り崩すため、13億6000万円となる見込みです。
令和6年度に新設した公共施設等整備基金の残高は、令和6年度当初予算では5000万円の見込みでしたが、令和6年度末時点で4億3000万円となる見込みであり、令和7年度当初予算においては、今後の施設整備を見据えて、これを維持する予定です。
これらの指標を注視し、健全な財政運営を行ってまいります。
一般会計と4つの特別会計の当初予算合計額は、194億2492万円で、前年度に比較して9億1978万円、5.0%の増となりました。
3 具体的施策
次に、令和7年度の主な施策について新規事業を中心に申し上げます。
基本目標1 子育て・教育
未来を担う子どもたちが夢と希望にあふれ育つまち
1 子育て支援
子育て・健康づくり拠点複合施設整備事業では、令和7年3月に「(仮称)加茂市子育て・健康づくり拠点複合施設整備基本計画」を策定します。この計画に基づき、既存施設が持つ機能の集約・拡充などを図るため保健・健康管理機能、地域子育て支援拠点機能、市民交流機能、行政事務・相談支援機能の4つの機能を導入した新たな複合施設の整備を進めます。
また、災害時における福祉避難所や専門職による応援チームの受け入れ拠点とすることも予定しています。
そして、複合化のメリットを活かし、各機能の相乗効果による切れ目のない円滑な支援・サービス向上を図ります。
なお、施設の設計・施工を一括で発注するデザインビルド方式を採用することで、民間事業者のノウハウを生かした建設コストの縮減と品質の向上及び早期のサービス提供を図ります。
今後想定される事業スケジュールは、令和7年度に事業手法を決定、公募型プロポーザル方式で業者を選定し、ワークショップ等で市民からいただいたご意見を踏まえたうえで、基本設計を作成します。そして令和8年度に基本設計を基に施工に必要な設計図面等を作成する実施設計業務を行い、令和9年度に建設工事を施工、令和9年度末の開設を目指します。
令和6年度に計画期間の最終年度を迎える「第2期加茂市子ども・子育て支援事業計画」の次期計画策定と合わせて、社会環境の変化や加茂市のこども・若者、子育て家庭を取り巻く課題に、効果的かつ一体的に取り組むため、「子ども・若者計画」「子どもの貧困対策計画」を包含した「加茂市こども計画」を令和7年3月に策定します。
保育の多様化するニーズに対応するため、加茂西宮保育園において、未就学児童を対象に、土曜・日曜・祝日の一時預かりを実施します。冠婚葬祭や家族の病気、仕事の都合などのやむを得ない事情のほか、リフレッシュのための短時間利用も可能となっています。
母子保健分野では、令和7年度から乳児1か月児の健康診査の費用を助成し、経済的負担の軽減を図ることで積極的な受診奨励を行います。
また、発達支援が必要な方の早期発見や早期支援ができるよう知識を深めるために、保育士及び保健師を対象に療育対応力向上研修会を開催し、適切な支援技術を身に付けることができるように努めます。
市内に3園ある公立保育園のうち、少子化や施設の老朽化を踏まえて、西加茂保育園を令和8年3月31日に閉園します。また、今後は検討委員会を設置して、公立保育園の再編を含めた適正規模と配置について検討を進めます。
2 結婚・妊娠・出産
令和4年から実施してきた妊産婦メンタルヘルスオンライン健康相談を見直し、産婦人科・小児科オンライン健康相談を実施します。妊産婦や子育て家庭が心を健やかに保ち、安心して妊娠・出産・育児ができるよう、支援を必要とする方がオンラインで産婦人科医や小児科医、助産師等の専門職の健康相談を無料で受けることにより、産後うつ等の重症化予防に努めます。
3 学校教育
加茂市の学校教育はこれから大きく変わろうとしています。
令和7年3月に、小中学校の再編を見据え、加茂市の教育を特色あるものとするため「加茂市教育ビジョン」を策定します。このビジョンで掲げる“加茂市で育てる子ども像”は「未来の創り手として 自ら学び続け 心豊かに たくましく生きる ふるさと加茂を愛する子」です。今後は、この「加茂市教育ビジョン」に基づいて様々な施策を展開していきます。
令和7年度は教育施設の再配置を検討する委員会を設置し、統合する中学校や新設する中学校、給食センターの位置を決定します。
また、教職員や保護者、地域の方々などで構成する統合準備委員会を設置し、その中に統合中学校の新しい校名や校歌、教育課程の編成、生徒会や部活動、更にはPTAのあり方などを議論するワーキンググループを立ち上げます。
これらの取組を通じて、行政や学校、地域が一体となり、これからの新しい学校づくりを進めていきます。
令和8年度にGIGAスクール構想の第2期を迎えるにあたり、更に大容量で高度な教育コンテンツを扱うことを見据え、児童生徒が使用するタブレット端末を令和7年度中に入れ替えます。
部活動地域移行については、令和5年度から3年間かけて、土日の活動を地域の活動へと段階的に移行しています。3年目にあたる令和7年度を「完了年度」と位置付け、部活動コーディネーターを新規に採用します。学校及び各競技団体と連携しながら新たな地域クラブチームの立ち上げを含め、持続可能な仕組みを構築し、年度末の完全移行を目指します。
放課後児童クラブは、これまで利用料を無料として市が直接運営していましたが、令和7年度から有料化し、運営を民間に委託することとしました。このことにより子どもの支援体制の強化や対象学年の制限撤廃、これまで休館していた学校の振替休業日の開館、長期休業日の開館時間の拡充及び欠席連絡や出退管理のデジタル化等を実現します。また、今後も利用者からのご意見を大切にし、一層利用しやすいクラブ運営に努めます。
基本目標2 健康・福祉
ともに支えあい、だれもが安心して健やかに暮らせるまち
1 健康・医療
健康事業がより効果的に進められるよう、令和6年度から地域活性化起業人制度で派遣されている医療政策専門員及び医療政策アドバイザーにより、分析された様々なデータを活用していきます。そこから保健事業と介護予防が一体的に取り組めるよう、生活習慣病フォローアップ事業や健康講座への参加を促すなど市民の健康づくりを推進します。
令和7年度から65歳以上を対象とした帯状疱疹予防接種を定期接種として実施します。予防接種を受けることで発症予防や重症化予防が期待できます。
住み慣れた地域で健康で安心して暮らしていくために、適切な医療が受けられることは必要なことです。病院、診療所の維持や拡充、そして新たな開設につなげるため、診療所設置奨励事業補助金交付の制度を活用していただけるよう周知に努めます。
2 障がい者・障がい児福祉
障がい者差別解消法などを基に、障がいのある人もない人もお互いを尊重し、思いやりを持ちながら支えあう共生社会の実現を目指し「障がいのある人もない人も支えあいともに生きる加茂づくり条例」が令和6年12月に制定されました。略称は「加茂支えあい条例」です。
条例の目的を実現する取組として、障害者差別解消支援地域協議会の役割を担う加茂市自立支援協議会と連携し、条例の周知を図るとともに、障がいや障がいのある人について理解を深め、心のバリアフリーを推進する取組に力を入れていきます。
手話を使うろう者及び手話を使わない難聴者を含む、聴覚障がいのある人の情報コミュニケーションを支援する「遠隔手話・文字通訳システム」を導入します。このシステムは市内の公共施設の窓口や医療機関、学校、救急、災害時の避難所などで活用することを想定しています。
加茂市には、医療的ケア児や障がいのある人を預けられるレスパイト施設がありません。加茂市単独での設置は難しいため、広域での設置に向けて検討していきます。
障がい児支援における新たな取組として、加茂市相談支援ファイル「育ちサポートファイル『めぐり』」の運用を令和7年度から開始します。相談支援ファイルは、支援を必要とする子どもについて、早期から一貫した支援につなぐためのツールです。加茂市においては、市内の支援機関に所属する支援者から成る、自立支援協議会こども支援部会が作成しました。ファイルの利用は、保護者又は当事者本人の任意で、保護者と支援者が記録していきます。当事者の基本情報及び診断書や、各支援機関が作成する支援計画書、相談の記録などを1冊にまとめて情報を蓄積し、支援者と共有することができます。このファイルを活用することで、子どもを中心とした、家庭・教育・福祉の連携を強化し、ライフステージに沿った切れ目のない支援体制の構築を目指します。
地域活動支援センターやまびこ作業所の運営については、障がい者支援サービスの効果的かつ効率的な提供が期待できる民間事業所に委託します。今後は更なる質的向上を図り、障がいのある人の日中の居場所として、充実した活動の機会を提供します。
3 高齢者福祉
高齢者や障がい者の介護施策については、民間事業所の新規参入を促進すること、また、2か所の地域包括支援センターを中心に、高齢者の生活を総合的に支える地域包括ケアシステムの構築に向け、高齢者が要介護状態になっても住み慣れた場所で自分らしい生活が送れるように、在宅医療に係る医療連携体制などの基盤整備を進め、住まい・医療・介護・予防・生活支援を一体的に提供することで、フレイル予防から看取りまで切れ目のないサポートを行います。
加茂市の令和7年2月1日現在での高齢化率は39.8%です。高齢化率は年々高くなっており、将来的には超高齢化の進行に伴い、認知症の高齢者の増加が見込まれます。このような状況の中、認知症の人が尊厳を保ちながら幸せに暮らしていける地域を実現するため、「認知症とともに生きる笑顔あふれるまち加茂基本条例」が令和6年9月に制定されました。略称は「加茂市認知症基本条例」です。この条例に基づき、認知症に関する知識の普及啓発や相談体制の充実を図り、引き続き認知症の人と家族を支援します。また、認知症施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、認知症施策検討委員会を設置します。
基本目標3 生活・環境、生活基盤
安全・安心で環境にやさしいまち
1 防災・減災
地域の防災力向上に資するため、令和6年度から新たに地域の防災リーダーを育成する防災士養成講座及び防災士フォローアップ研修会を開催しました。令和7年度も引き続き開催し、更なる地域防災力の強化を図ります。
公共施設の再編に伴う今後の避難所のあり方や避難所の生活環境向上に関して課題を洗い出し、今後の避難所の方向性を検討します。
2 消防・救急
消防本部車両の老朽化が進んでいるため、加茂市負担分は過疎対策事業債を活用し、指令車1台を更新します。消防団車両についても、緊急防災・減災事業債を活用し、小型動力ポンプ付積載車3台を更新します。
また、消防団設備整備費補助金を活用し、災害対応に必要な雨具、救命胴衣等個人装備の配備を進めます。
消防本部庁舎については、昭和54年の建築から45年が経過し老朽化が著しいため、令和6年度から2か年計画で大規模改修を行います。令和7年度は感染症対策のための増築・改修工事及び耐震補強を行います。
3 防犯・交通安全
犯罪防止と市民の防犯意識の向上を図るため、加茂市防犯協会及び加茂・田上防犯協会と連携し、各地区防犯協議会の防犯広報誌の作成や防犯パトロールへの支援、加茂駅周辺での自転車盗難防止PRなど、防犯啓発活動を積極的に行うことで安全で安心なまちづくりを推進します。
市民の安全・安心な消費生活を確保するため、消費生活相談窓口を開設するとともに、新潟県消費生活センターと連携し、相談体制を維持します。また、契約トラブルや多重債務に関する弁護士相談会の開催、消費者被害の未然防止のための啓発活動などに引き続き取り組みます。
交通事故の減少のため、加茂地区交通安全協会と連携し、交通安全運動期間中における交通指導所の設置など交通安全啓発活動に引き続き取り組みます。
4 生活環境
加茂市・田上町清掃センターについて、加茂市・田上町消防衛生保育組合では、令和6年8月19日に開催した組合議会全員協議会において、三条市にごみ処理を委託する協議を進めるべきであるという考えを表明しました。
これは、加茂市、田上町の可燃ごみの処理について、将来のごみ排出量を再試算し、35tクラスの焼却施設を建設して行う場合と三条市に処理を委託した場合の経費比較を行い、加茂市、田上町の今後20年間の財政シミュレーションを行った結果、加茂市民、田上町民の利便性に大きな変化が無く、両自治体の財政負担が軽減され、現在想定する将来事業を少しでも多く実現できると考えたからでした。
今後は、清掃センターに関する議論の経緯を十分に伝えるべく、三条市に可燃ごみ処理委託の協議を進めていくことについて、方針を転換した理由なども含めて市民に対して説明していくとともに、地域の声を聞いていきたいと考えています。
方針の最終決定まで組合議会と協議を重ねるとともに、ごみ処理委託の三条市との協議を進めていきます。しかしながら、当面は現在の清掃センターを修繕し、稼働し続けなければなりません。焼却炉への負荷を低減させるためにも、ごみの減量化・再資源化に積極的に取り組みます。
ごみの分別意識の向上につなげるため「中身の見えるごみ袋でのごみ出し」を実施したことで、令和5年度において、加茂市の年間ごみ排出量が、前年比15%減となりました。また、令和6年度に入っても大きなリバウンドはありませんでした。そのため、ごみ減量化の取組は順調に進んでいる状況です。今後も更なるごみ減量化の実現に向け、古着やプラスチックなど、リユースやリサイクルに活用できる品目の回収方法について検討を続けます。
2050年までに、二酸化炭素排出量を実質ゼロにする「加茂市ゼロカーボンシティ宣言」の実現に向け、令和6年度に策定した「加茂市環境基本計画」や「地球温暖化対策実行計画」に掲げる目標について、より多くの市民にご理解いただけるよう、啓発・周知活動を展開します。また、公共施設での太陽光発電設備等の導入可能性を調査し、加茂市における再生可能エネルギー設備導入事業の実現に向け検討を進めます。
5 住環境
空き家に関する施策の方針を定めるため、空家等対策審議会を設置し、令和7年3月に「加茂市空家等対策計画」を策定します。この計画に基づき、市民が安心し、快適に暮らすことができるよう、空き家の発生防止や抑制の取組を進めていきます。
市が所有する未利用地の有効活用と加茂市への移住・定住の促進を目的に、市外からの移住者を対象とした通称「若宮ヒルズ」の住宅用地の無償分譲制度を令和6年9月27日から開始しました。制度開始から現在までに10区画のうち2区画の申込みがあり、移住を希望する方々からの関心が寄せられています。今後もこの制度の更なる周知・推進に努め、多くの移住者を迎え入れることで地域の活性化を図っていきます。
「加茂市街地地区第三期都市再生整備計画」に基づき、産業センター裏に災害時の避難場所確保のため、かつイベントや周囲の公共施設と一体として利用可能な幸町公園の整備を行います。
6 道路・公共交通
道路整備については、安全・安心な道路交通を確保するため、東芝横線や菅端諏訪ノ木線、福島線、下条矢立境線、九軒小路線、黒水丸山線、元狭口線、轟金鉢線の道路改良工事を行います。
また、舗装の傷みが激しく修繕の緊急性の高い加茂病院通線の舗装打替え工事を行います。
橋梁の長寿命化については、「橋梁長寿命化修繕計画」に基づき、老朽化対策として農道1号橋ほか10橋の修繕詳細設計を行います。また、高須町横線1号No.1ほか21橋の小規模橋梁の修繕工事を行います。加茂市の橋梁については、健全度判定4段階のうち、修繕の必要な健全度Ⅲ・Ⅳの区分に271橋のうち78橋、割合にして29%が該当し、全国平均の8%、県平均の15%を大きく超えており、将来に向けて計画的な修繕が必要な状態です。
消雪施設は、若宮町駅前線、周平小路線の老朽化した消雪用井戸を更新し、また穀町小橋線の消雪パイプの布設替えを行います。
令和7年1月末現在、「かもんタクシー」の利用者は10,075人で昨年同時期に比べ1,365人減少しましたが、「かもんバス」の利用者は55,339人で8,809人増加し、市営公共交通全体の利用者数は7,444人増加しました。
令和6年度に国の補助金を活用した共創・MaaS実証プロジェクト事業で行った「こども・子育て世代に優しい公共交通のリ・デザイン事業」では、9月から小中学生のかもんバスの運賃無料化を実施しました。11月以降の利用者数は、無料乗車券配布前と比べ約5.5倍と大幅に増加しました。公共交通利用券のデジタル化や小中学生のかもんバスの運賃無料化を引き続き実施し、誰でも利用しやすい公共交通の整備や幅広い世代の利用促進を図ります。
また、老朽化したかもんバスの更新に伴い、バリアフリー対応車両を導入します。
7 水道水の供給
水道事業については、給水人口、使用水量等の減少による給水収益の減少や施設の老朽化による維持費、更新費用などの増加により経営は依然として厳しい状況です。経営状況を改善するため、令和7年8月に料金改定を予定しています。また、引き続き経費削減について検討し、収支均衡のとれた安定的な事業経営に努めるほか、水道料金の未収金回収についても収納率向上に努めます。
浄水場で作られた水を無駄にすることなく配水できるよう管路の漏水調査を継続し、漏水箇所の修繕と、旭町・上条・第2区・下興屋向地内で漏水の恐れのある老朽管の布設替えを行います。
また、老朽化した浄水場施設・設備の更新を併せて行います。
令和6年度及び令和7年度の2か年で策定される「加茂市水道事業アセットマネジメント」は、財源の裏付けを持った更新需要見通しを作成することで、水道施設への更新投資が着実に実施されることを目的としています。それを基に、更新需要を的確に把握したうえで必要な財源となる料金収入を確保しつつ水道施設の計画的な更新に努めます。
8 汚水処理の推進
下水道事業については、公営企業会計の適用により経営状況を明確にし、経営基盤の強化を図るため8月に使用料改定を予定しています。
長期的な視点で下水道施設及び管路の維持管理や改築を計画的・効率的に行うための「加茂市下水道ストックマネジメント計画(第2期)」に基づき、持続可能な下水道事業の実現を目指します。
基本目標4 芸術・文化、スポーツ、自治・人権
学び、集い、ふれあって、自分らしく活動できるまち
1 生涯学習
図書館では、「加茂市子ども読書活動推進計画」の理念を踏まえ、「きっずDAY」を中心に、子どもに優しい図書館づくりに注力します。
乳幼児から高校生まで、各世代における読書離れに歯止めをかけるため、親子連れや学生が定期的に図書館へ行きたくなるようなイベントの開催に取り組みます。
公民館では、市民大学講座や教養講座、シニア教室などの各種事業・教室及び各分館事業や、家庭教育支援事業として親子ものづくり教室を実施し、幅広い世代と地域に学びの場を提供します。
民俗資料館では、終戦80年を迎えることから戦争関連資料の展示や、加茂市出身の植物学者であり、「台湾植物図譜」を著した「台湾植物学の父」と呼ばれる早田文蔵氏について特集展示を開催します。
各種事業を通じて、地域の歴史や文化を紹介することで、市民がふるさと加茂に誇りと愛着を持てる機運を醸成します。
2 芸術文化・文化財
文化財保護事業については、令和7年度に市所有文化財の防虫・防カビのため燻蒸作業を行い、保存状態の改善を図ります。また、市指定及び国登録有形文化財所有者との連携をはかり、より良い状態で次世代へ文化財を継承できる体制づくりへの取組を進めます。
3 スポーツ
子どもから高齢者まで健康と運動を結び付け、誰もが参加して楽しむことができるモルックやボッチャなどのニュースポーツの普及・啓発を行うとともに、スポーツ関係団体や民間事業者等と連携しながら、子どもたちのスキルアップ講習会やスポーツ指導者の育成事業などを開催し、競技力の向上を図ります。
市民の健康づくりや学校のプール授業等で利用されている温水プールの長寿命化を図るため、老朽化したボイラー・ろ過機の更新工事を行います。
4 市民協働・地域コミュニティ
快適なまちづくりのため、市民と行政が協働でまちの美化、環境整備活動を推進する環境美化プログラム「かも美化サポーター」は、現在22団体が市内各地での活動を実施しています。かも美化サポーター事業を通じて、地域への愛着を深め、地域コミュニティの活性化につなげる輪を広げます。
市民や各種団体が主体的に取り組む活動に対して、活動内容やニーズに応じたきめ細かな支援を行うとともに、各種制度の活用や関係課への円滑な橋渡しを行います。
5 人権・多文化共生
国際交流については、子どもたちが多様な交流を体験できるように、国内での英語体験学習を実施します。
また、英語圏の国との交流を進めるため、ニュージーランド・ファンガレイ市のテ・カモ地区にあるKamo Intermediate School(カモ・インターミディエイトスクール)と中学生同士のオンライン交流を始めます。
これを皮切りにファンガレイ市との教育・文化等の各種交流を進めるため、加茂市国際交流協会に事務局員として、地域おこし協力隊を採用し、友好都市の締結を目指します。
男女共同参画の推進については、令和5年3月に策定した「加茂市男女共同参画推進計画」の理念を踏まえ、「加茂市男女共同参画及び多様性を尊重する社会づくり条例」を令和7年度に制定します。
人権啓発については、「加茂市人権教育・啓発推進計画」に基づき実施する人権啓発施策の一つとして、毎年、県内で行われている「いのち・愛・人権展」を加茂市で開催します。
基本目標5 都市の魅力創造、産業・雇用
人が集い、賑わいと活力があふれ、稼ぐ力と雇用を生み出すまち
1 魅力あるまちづくり
加茂市に住む、関わる全ての方々が主役となって、主体的に活躍できるまちを目指します。
中心市街地とその周辺を含むまちなかエリアの賑わいづくりに向けては、産学官金が連携して活動するためのエリアプラットフォームが主体となって、具体的なまちの姿を示す未来ビジョンを令和6年度に策定しました。令和7年度は、商店街の有志が主体となって行う「まちなかコンシェルジュ」、加茂市観光協会が主体となって行うモニターツアーとガイドの養成など、情報発信の強化と担い手育成の取組を進めます。産学官金が一体となって未来ビジョンの実現に向けた取組を進めることで、まちなかエリアはもちろんのこと、加茂市全体の魅力や価値の向上に、引き続き取り組んでいきます。
公園施設については、「加茂市公園施設長寿命化計画」に基づき加茂山公園の水車を改築することで、癒しや潤いのある空間を形成していきます。
令和6年4月に観光協会を民間へ移行し、情報発信力の強化や認知度向上、誘客につながる取組を支援しました。特に、X(旧Twitter)は約6000人のフォロワーを獲得し、県内にとどまらず県外の方にも加茂市の魅力を発信できるようになりました。さらに、インバウンド向けのツアーを造成しテストマーケティングを行うなど、新たな取組にも着手しました。
引き続き観光協会と協力しながら加茂市の魅力やイベント情報等の発信を行い、加茂市を訪れる方々の満足度を上げること、加茂市の認知度を向上することを目的に、観光客へ向けた新しいアプローチを進めていきます。
加茂七谷温泉 美人の湯では、物価高騰や人件費の増加に対応するため令和7年4月から入館料の値上げを行うことになりました。入館者数は増加傾向にありますが、更に利用者数を増やすため、指定管理者と連携し、同施設並びに周辺地域の魅力の向上につなげていきます。加えて、非常灯・誘導灯のLED化や空調設備のデジタル化対応のための機器更新を行います。
人口減少・高齢化の急速な進行に起因する様々な課題に対し、市街地をコンパクト化して都市の持続性を確保するため、「加茂市都市計画マスタープラン」に基づいた「立地適正化計画」を令和9年度末までの3か年をかけて策定します。また、近年頻発・激甚化する自然災害に対し、災害に強いまちづくりを目指すため、防災指針をこの計画に盛り込みます。
2 商工業の振興
令和7年度も引き続き起業・創業の促進を図るため、産業競争力強化法に基づく「創業支援等事業計画」の特定創業支援等事業である「創業塾」を加茂商工会議所と連携し実施します。令和6年度は約20名が受講、うち4名が創業チャレンジ支援事業費補助金を活用し、市内での創業につなげることができました。
受講者を創業支援対象者として、加茂市や加茂商工会議所のほか、地域金融機関や日本政策金融公庫など連携団体とともにバックアップする体制を強化し、引き続き市内での創業者数の増加を図ります。
市内事業者の地域特産品をふるさと加茂応援寄附金、いわゆるふるさと納税の返礼品として採用することで、全国への販路開拓を図ります。
また、新たに「地場産品開発等支援事業費補助金」を創設し、主にふるさと納税返礼品を提供している事業者が行う商品開発等に必要な経費を支援します。この支援により、新たな地域特産品の創出や磨き上げを通じた付加価値の向上を目指します。
令和6年度のふるさと納税額は、令和6年12月時点で10億円を超え過去最高額となりました。「加茂市総合計画」では、令和7年度末にふるさと納税額10億円を達成するという指標を定めており、一年以上早くその指標に到達しました。
引き続き市内事業者との連携を密にし、ふるさと納税をきっかけとした地場産業の振興や地域経済の活性化を目指します。
さらに、包括連携協定を締結している株式会社新潟三越伊勢丹との取組も深化させ、「顧客起点の考え方」による市内事業者の更なる成長を図ります。
3 中心市街地の活性化
中心市街地の活性化を目的に、「空き店舗対策事業」を継続して実施します。商店街等の協力を得て空き店舗の状況を把握し、新規出店者に対して店舗の改修費用や家賃を補助することで、空き店舗の解消に努めます。
4 農林水産業の振興
加茂市農業委員会、三条農業普及指導センター、JAえちご中越等の関係機関と連携し、地域の未来図である「地域計画」を令和7年3月に策定します。この計画を基に、農地中間管理事業を活用して担い手への農地集積・集約化を促進し、生産性向上を図ります。
農地集積・集約化を進めるうえでは、担い手同士の連携も必要なことから、担い手の組織作りにも引き続き取り組み、セミナーの開催や交流の場の提供などで、自己研鑽に取り組む認定農業者等を支援していきます。
国の中山間地域等直接支払交付金を利用し、生産条件が不利な地域における農業生産を継続するための活動を支援します。
遊休農地においてキャベツ、きゅうりなど消費の多い野菜14品目やそばを新規作物として導入する農業者を支援し、生産、販売の拡大と遊休農地の解消を目指します。
「加茂市鳥獣被害防止対策協議会」が国の交付金を活用し、ICT機器や罠を導入して行う被害防止活動等を支援していきます。
クマ、イノシシ、ニホンジカなど有害鳥獣の捕獲については、有害鳥獣捕獲罠遠隔監視システムを有効活用し、作業の省力化や安全対策の向上に努めるとともに、令和7年度から加茂市鳥獣被害防止計画に基づき鳥獣被害防止施策を行い、猟友会の会員から成る鳥獣被害対策実施隊を組織し、更なる有害鳥獣対策に努めます。
基本目標6 行政活動
社会の変化に対応し、市民に寄り添い、未来への責任を担うまち
1 財政運営
令和5年度から公共施設再編アクションプランの策定に着手し、定量的かつ客観的なデータの分析を進め、各施設の新設、統合、廃止、転用、譲渡や売却などの実施方針と実施時期の検討を行い、令和7年3月末にアクションプラン案を作成する予定です。
令和7年度においては、この案を基に市民と対話を重ねることで、このまちを続けていくための計画としての意義と必要性について、一人でも多くの方にご理解いただけるよう努めながら策定を目指します。
また、このアクションプランに合わせて、公平性の観点から行政サービスにおける受益者負担の適正化を図るために、施設使用料の減免を見直していきます。
一方で、アクションプランの策定に先駆けて見直しが可能な、あるいは見直しが必要な部分については、引き続き見直しをしていきます。
市からの補助金等は行政目的を効果的かつ効率的に達成するうえで重要な役割を担っていますが、長期化・既得権化することが多く、変化する社会情勢に合わせて見直すことが必要です。補助金等については、公益性などを総合的に判断して適正な交付に努めるとともに、交付に関する統一的な基準の策定を目指します。
2 行政運営
令和7年度末には「加茂市総合計画」の後期基本計画を策定し、令和8年度からの5年間における市が将来目指す方向性を市民と共有します。
地域活性化起業人制度を活用したデジタル専門人材により、手続きのデジタル化と業務DXの推進に取り組むとともに、地域社会DXを推進するためのビジョンを策定し、利便性の向上を図るための推進体制の構築を図ります。
庁内の組織を見直し、コンパクトで業務効率のよい、時代に即した組織づくりを目指すとともに、職場環境の改善を図ります。
デジタル社会のパスポートとも称されるマイナンバーカードの加茂市における保有率は、令和6年12月末時点で80.29%となり、多くの方が保有している状況となりました。また、コンビニエンスストアでの住民票、印鑑登録証明書、所得証明書、課税証明書の取得や転出届の電子申請が可能となるなど、活用範囲も広がりました。また、令和7年3月24日から、パスポートの申請も電子申請が可能となります。令和7年度も引き続き申請が困難な方を中心に、マイナンバーカード作成のサポートを行い、普及に努めます。
令和7年の確定申告受付から、待ち時間の解消や申告会場の混雑緩和のため、新潟県と共同で行う「電子申請システム」を活用した事前予約制に変更しました。また、税務署への申告書の引き継ぎをデータのまま行う「データ引継」に取り組み、還付金の早期受け取りや添付書類の省略を図るなど、より一層確定申告時の市民サービスの向上と事務の効率化に努めていきます。
市議会については、令和6年度に更新した議会配信システムを活用し、速やかに映像を配信することで、市民に開かれた地方議会を目指します。
物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金を活用して、令和7年10月請求分から令和8年1月請求分までの水道基本料金を減免し、生活者と事業所の負担を軽減します。また、光熱費軽減につながる省エネ家電等への買い替えを促進するため、購入費用に対する補助を行います。さらに、学校給食会への食材費補助により、小中学校の給食費を据え置きます。中小企業者等に対しては、事業継続を目的とした設備投資など業務効率化等の生産性向上を目指す取組に対する支援を行います。
4 結び
以上、令和7年度の市政運営の基本方針並びに主要事業について、ご説明いたしました。
令和6年に民間の有識者で組織される「人口戦略会議」が発表した「地方自治体『持続可能性』分析レポート」によると、加茂市は子どもを産む中心になる年齢層の20歳から39歳までの若年女性人口の減少率が、2020年から2050年までの30年間で50%以上となる「消滅可能性自治体」に該当します。
これらの背景には、国全体で少子高齢化が進行し、若年層が減少していることや、進学や就職をきっかけに、未婚の若年女性をはじめとした若者が都市部に流出することが挙げられます。特に加茂市の若年女性の推計人口については、2020年から2025年にかけて想定より大幅に減少し、2018年に推計した1,764人から1,354人に修正され、それに伴い、0~4歳人口も620人から429人に修正されました。
若年女性が流出する原因については、大学等への進学先、やりたい仕事が地方では見つからないこと、都市部は地方に比べ賃金水準が高いことなど、これらの要因が複合的に絡み合い、このような現状を引き起こしていると考えられます。この問題に対処するためには、地域社会全体で、雇用機会の創出、地域の活性化、子育て支援、固定的性別役割分担意識による偏見の解消など、様々な対策を講じる必要があります。同時に、どんなに私たちが努力しても必ず訪れる超少子化社会を直視し、その来たる社会に備えることも必要です。そのためには、短期的な視点だけではなく、大局的な視点が欠かせません。
大変ありがたいことに、大局的な視点を持ち、今何をするべきかを考え、行動してくださる市民が増えてきたと感じます。この兆しは、加茂市にとって希望の光です。
私たちが直面している問題を一朝一夕に解決することができるような魔法や手品はありません。時間がかかったとしても、一人ひとりの意識と行動を積み重ねていくことでしか解決への道筋を見出すことはできないのです。私は、こうした想いの積み重ねが私たちの愛するこのまちを未来につないでいくための何よりも大きな力になり、道しるべになると信じています。
結びに、市民の皆さま並びに市議会議員の皆さまにおかれましては、引き続き「笑顔あふれるまち 加茂」の実現のため、加茂市政にご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げ、令和7年度の施政方針といたします。